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  016─氷人形2─

…しかも回転している様だな。
無音で回転する大剣を腰だめに構え、突っ込んで来た。
…こっちも決めにいくか。
「幻魔流、地閃三段」
思いっきり地面に斬撃を叩き込む。
ガゴッ!
大量の土煙と岩が舞い、シャルの姿が見えなくなる。
シャルは土煙の中を移動し、大剣人形の後ろへ回り込んでいた。
そのまま大剣人形へ膝蹴りし、濡魂で斜めに斬り下ろしてから、斬り上げた。
大剣人形がふわりと宙へ浮く。
身を屈め、シャルは垂直に跳んだ。
「…幻魔流、魔天閃」
ゴッ!
シャルは自分の身体をひねり、下から上へ強烈な斬り上げを大剣人形に叩き込んだ。
濡魂を収めながら地面へ着地する。
大剣人形はダメージを負ったらしく、受け身をとらずに落下してきた。
「幻魔流 連斬之太刀!」
落下にあわせて抜刀する。
ガガガグギギボリッ!
振るった斬撃がノコギリの様に何度も当たり、途中で大剣人形が砕け飛んだ。
砕けた人形は転がったきり、再び動き出す気配はない。

ドザァッ!
湖に落ちた突剣人形が飛び出してきた。
「そのまま沈んでくれていれば助かったんだがな。」
再び濡魂を収め、突剣人形の方を向く。

  017─決着─

突剣人形は湖に入ったせいか、全身がキラキラと輝いていた。
…斬るのが惜しい。
一瞬そう思う。
突剣人形は、雫をぽたぽた垂らしながら、ゆっくりシャルの方へ歩みよっていく。
「幻魔流、…斬空」
ゴギッ!
シャルが放った真空の刃は、容易く突剣人形を砕いた。
「お見事です」
水神龍がそういうと、濡魂がシャルの手を離れる。濡魂、ウォレスシグルド、ウルゼクサーの三本が、再び洞窟の天井へ突き刺さった。
刺さっている濡魂を少し眺めていたが、
「…さて、見逃してもらうとしよう」
と、シャルが背を向ける。
「淡々としてますね。ともあれ、話があります。聞いてくれますか?」
水神龍は聞いた。
シャルは今更ながらここが寒い所であることを思い出し、ふるふると震えながら、
「…聞こう」
と言った。
水神龍は何から話そうか思案している様で、少しの沈黙を経て口を開いた。
「まず、貴方がここにいる理由から話しましょう」
…私がここにいる理由?村長にはめられただけの事じゃ無いのか。そう思ったが、口には出さなかった。
「貴方は本物の村長から依頼を受けた訳ではありません」

  018─真実─

「貴方が依頼を受けた相手は、私の眷属の水精です」
…確かに村長はおかしかったし、会った回数も数えるほどしかなかった。しかし、見間違う事なんてあるものだろうか。
「そこまでして貴方をここに呼んだ理由を話すには、私の今の立場について話さなければなりません。少し長くなりますが、構いませんか?」
「…手短に頼む。こおりが身に染みる」
「?今、言葉が変じゃありませんでした?」
…こおりの意味を間違えたか?
「…ひとつ聞くが、こおりって…何だ?」
「…?今そこらじゅうにある半透明で冷たい物質の事ですが」
シャルは無言で頷いた。
水神龍が眷属に何か指示した後、洞窟が少しあったかくなった。
「では、私の立場について説明します。まず私の居た場所ですが、神界、天界、混界、死界の4つのうち、神界に住んでいました。…しかし、神界の方針が気に入らず、、混界へ身を隠す事になったというわけです」
「私がここにいる理由とどう関係する?」
「魔力の質が貴方と私、非常に酷似しているんです。それを利用して神の尖兵の索敵をやり過ごそうと考えました。相手にしていたらキリがありませんからね。手短に言います。…シャル、貴方に憑かせて下さい」

  019─二話完結─

「……!」
「貴方の魔力は膨大です。しかし、それを使う術がない。私が憑くならその魔力、存分にふるう事が出来ますよ」
「………………。」
「………………。」
お互いに無言で向きあっていたが、シャルが口を開く。
「…面白くなりそうだな」
「ええ、私もそう思います」
互いにニヤリと笑う。



洞窟を出ると、時刻は昼、陽の光が眩しい。
「…そういえば、名前、なんていうんだ?」
「え?ないですよ?」
意外な事を聞かれた、という表情をして水神龍が返す。
「神っていうんだから、格好いい正式名称とかあるんじゃないのか?」
歩きながら水神龍に聞く。
「じゃあ、グレートテンペスト・ハクシャクダイマオウなんてどうです?」
「じゃあってなんだ…。本当に無いのか?」
呆れ顔で再び聞く。
「ええ。…そうですねぇ、確かに毎回『水神龍』と呼ばれるのもアレですし…。貴方が決めて下さい」
…コイツって本当に神なのか。
…名前、…名前、
………。
結構な沈黙の後、水神龍に言う。
「…『セレン』で決まり。拒否はなしだ」
「構いませんよ。私としては、まとも過ぎてつまらないですが」
…自分の名前だろう。
ハァ、と溜め息を洩らすシャルだった。




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